18歳のとき、地元大分県を離れ、沖縄の某国立大学に入学した。
映画大好き少年だったので、映画研究会に入った。その年の新入部員は私だけだった。ウッチーさんという大人しめの先輩がいた。
ある日、サークルでおしゃべりしてると、ウッチーさんから「ビデオカメラのアルバイトしない?」と誘われた。
「ビデオカメラのアルバイト・・・なんか面白そう・・・技術も付きそうだし、是非やりたいです!」
「じゃぁ土曜日いっしょにアルバイト先に行こう。スーツ着てきてね。」と言われた。
まだ慣れないネクタイをなんとか締め、ウッチーさんの車でアルバイト先に向かった。
私はよく、話半分で承諾することがある。なんか面白そう!って感じで。これがいい方向に行くこともあるし、そうじゃないこともある。
このときも、いったいなんの撮影なのか?給料はどのくらいなのか?拘束時間はどれくらいか?など、全くわからないまま承諾したので、どこに連れて行かれるのかもわからなかった。
でも、いつもまぁなんとかなるか!という気持ちで飛び込むのだ。
大学から車で20分ほど走った、那覇近郊の雑居ビルに着いた。築40年は言っているであろうボロボロの建物の中は、ジメッとして暗かった。
エレベーターで7階に上がる。映画「マトリックス」で、猫のデジャヴを目撃する雑居ビルに似ていたので、これから赤いカプセルでも飲まされるのだろうかなんて妄想をしていた。
事務所に入ると、数人のカメラマンらしき人たちがテーブルで弁当を食べている。
ウッチーさんから上司に紹介してもらった。上司から話を聞くと、どうやら結婚式の披露宴のビデオカメラマンのアルバイトらしい。
弁当をいただき、雑居ビルの道向かいにある、披露宴会場に向かう。
17歳のとき、兄貴夫婦の結婚式に一度出席した。そのときは小さなレストランを貸し切って行われたため、いわゆる結婚式場での披露宴体験は初めてだった。
会場はとても広かった。はじめは、カメラマンの後ろに付いてコードをなおしながら撮影の仕方を見学した。開場前には、ビデオカメラの担ぎ方、撮影の仕方、移動の仕方を教えてもらった。
見学3回目くらいに突然上司に言われた。
「今日、担いでみようか」
「え、早くない?」
と思ったが、やるしかないと思い、後半の30分を任された。とても緊張した。慣れない重いビデオカメラに苦戦した。ガタガタ震える映像をみてインカムから「揺れるな!がんばれ!!」と言われた。
そんなこと言われても・・・くっ・・・重い・・・!!
でも、新郎新婦にとっては、今日撮影するカメラマンが新人かベテランかどうかなんて関係ない・・・しっかり撮らなきゃ・・・!一生残る記録だ!
なんとか撮り終えた。なんとかなった・・・。
汗はびっしょり。腕はプルプル震えていた。これが私のビデオカメラマンのデビュー戦だった。
つづく