これから親知らずを抜く人へ

仕事を途中で抜け出して、親知らずを抜きに琉大病院に行く。

職場のおばちゃんたちに「痛いよ~こわいよ~」と脅されたが、大したことないだろうから、「パッと抜いてきて、また仕事戻りますね!」と言い、職場を後にした。

口腔外科の13:00予約の15分前に到着。すぐに中に通された。

今日は、4本ある内の、左の上下2本を抜く。

上の親知らずは、まっすぐ見えるところに生えているのだが、下の親知らずは、歯茎に完全に埋まって、さらに横になっている。これは少し大変ですねと問診のときに言われた。

担当医は、私と同い年くらいの、小柄な女性。難しい下の親知らずから抜く。局部麻酔を打たれ、5分ほど待つと、左顎の感覚がなくなった。

助手に女性の看護師がついた。口の部分だけ丸く開けられた布を被せられた。目隠しをされるような気分だったので、思わず「こわい・・・」と言ってしまった。

「痛かったら左手をあげてください」と言われ、手術が始まる。

まず、歯茎を切開する。そして、横になった歯を砕いて取り出す。ドリルのようなもので歯を砕かれる。時々とんでもない激痛が走る。思わず左手をあげる。痛いところを確認され、麻酔が追加される。20分後「歯の頭がとれましたよ~。」といわれた。やれやれ、もう少しだと思ったら、ここからが大変だった。歯の根っこが湾曲して生えており、顎の大きな神経にとても近いところにあるらしく、抜こうと力を入れると、その神経に触れ、とんでもない激痛が走るのだ。その激痛は、左手をあげる騒ぎのものではなく、首から下はのたうちまわっていた。「ゔぁぁぁぁ!!ゔぁぁぁぁぁ!!」と口が開いたまま叫んだ。しかし、顎の大きい神経には麻酔を打つことはできないので、医者は「痛いですよね・・・」といいながら、静かに作業を続けた。頼むから、早く終わってくれ、と心の底から思った。捕らえられたスパイが、拷問椅子に座らされて、拷問されているシーンみたいだった。痛い、こんなに痛いのは久しぶりだ。ドリルが歯を削るたびに、歯をグイッと引っ張られるたびに、激痛がやってくる。それが恐怖だった。呼吸が荒くなり、少し泣いた。時々医者が「可能性にかけるか・・・!」とドラマのようなセリフを吐くたびに、不安になったが、もう彼女たちを信用するしかない。1時間後、歯を4つに割って、ようやく取り除けた。歯茎の縫合のときは、疲れてぐったりしていたので、看護師に「松野さん!?大丈夫ですか!?」と心配された。かすかに首を縦に振るくらいの力しか残っていなかった。

上の歯は、5分で抜けた。簡単に抜けすぎていつ抜けたのかわからなかった。

とにかくみんなに言いたい。目視できる親知らずは、簡単に抜くことができる。しかし、歯茎に埋まっていたり、横になっていたり、顎の神経に近い親知らずの手術は、覚悟した方がいい。

術後、ジンジンと痛む歯を抑えながら、10分ほどぐったりしていた。いくらうがいしても、真っ赤な唾液が永遠に出続けた。ロキソニンを1錠のんだ。医者に「今週末が痛みのピークでしょう」といわれ、完全にうろたえた。本当に勘弁してくれ・・・。

フラフラと職場に戻った。以前、上司が歯が痛くてとても落ち込んでたときに、笑った自分を猛省し、上司に謝った。

「もう二度と歯痛の人を笑いません」

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