存分に主役でいてくれ

式場のロビーには、おしゃれなバーカウンターがあった。

そこで、シャンパンを飲む。

かっこつけてみた。

久しぶりに高校の人とあった。

クラスは違ったけど話したことあるやつらばかりだ。

毒舌で同じドラマーだったY井が、来年1月下旬に結婚するらしいので、それに合わせて帰省しようかなぁとか考えていた。

親戚、友人、職場合わせて60人ほどの会場。

沖縄の規模に慣れていると、コンパクトに感じる。

川添自作のカルピスのCMがウェルカムムービーで流れた。

川添家のおじいちゃんとお兄さんがカラオケを披露し、

川添本人も自作のムービーを流しながら、生歌を披露した。

川添がやりたいことを全部詰め込んだ、素晴らしい披露宴だった。

前日のバーで川添はこう話した。

「むねたか(おれのことをむねたかと呼ぶ人間はとても少ない)、人生で主役になれるときってのは、3回あるんだ。生まれるときと、結婚するときと、死ぬときだ。そのうち、生まれるときと死ぬときは自分ではわからない。唯一、結婚するときが、自分で実感できるんだ。だから、明日は自分のやりたいことをやるんだ。」そう言ってカルピスソーダを流し込んだ。

この言葉には、川添の優しさが詰まっていた。

あえてここでは書かないが、彼の20代前半は大変だった。

色々な歯車が悪い方に噛み合ってしまい、彼をあらぬ方向に進ませてしまった。

彼は、そのことを全て覚えているらしい。

それはとても辛いことだと思った。

私は、無責任にも聞こえるかもしれないけど、と前置きをした上で、彼にしっかりと伝えた。

「たぶん、全て必要なことだったんだ。そう思えたら乗り越えていける。」

事実、彼は自分の問題を乗り越え、就職し、結婚した。

こんなハッピーなことがあるか。

川添、おれは人生の主役になれるのが、たった3回なんて思わないぞ。

だっておまえは、今までも、この先も、お前の世界の中で、ずっと主役だ。

ぼくらは誰かが作った世界で生きてるんじゃない。

自分で感じたこと、思ったことで、構築される世界で生きている。

もしまた、お前が作った世界にお前自身が飲み込まれても、

それはそれで、しょうがないことだと思う。

だから、これからも存分に「主役」でいてくれ。

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