アメリカ人のコリンさんが来たのは、5月のこと。
カリフォルニアから、日本語を勉強するために沖縄に来た。
モジャモジャのヒゲと髪の毛のせいで、老けてみえるが、私と同じ、29歳だ。
おばぁちゃんが日本人で、ちいさいころから、日本の文化に触れ、関心があった。
元プロサーファーで、今は伊勢海老の漁をしながら、油絵を描いている。
独学で日本語を勉強した。漁の空き時間など、船の上で、日本語の本を読んだ。
彼は、いつでもTシャツと海パンとサンダルだった。
海が大好きだった。沖縄にサーフボードを持って来て、波に乗るつもりだったが、あいにくいい波には巡り会えず、残念そうだった。
カエルや蝶、蝉の抜け殻、夕映え、など自然のものが大好きだった。
一緒にご飯を食べにいくと、さらさらとスケッチを描き、卓上にあるポン酢や醤油で色付けする。
ビールが大好きで、水のように飲む。
私も彼に影響され、ときどき絵を描いた。
彼がカリフォルニアに帰る朝、私に絵の具とスケッチブックをくれた。
「マツノさん、私はあなたの絵がすきです。絵を描き続けてください。」
アメリカの政治の話、カリフォルニアの山が燃える話、伝説のサーファーの話、ラッパーの東西戦争の話、色の話、宗教と芸術と想像力の話、たくさんいろいろなことを教えてくれた。
英語ができない私に、一生懸命日本語で伝えてくれた。
別れ際「またすぐに会おう」といった。
コリンさんはいつものようにいたずらっぽい顔で笑い、ピースサインをした。
カリフォルニアに行く。そう、決意した。